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2016/01/29(金) 累積投票制度  司法書士 立花 宏
「取締役の選任決議は、累積投票によらないものとする」

 多くの株式会社の定款に、このような規定が設けられているのではないかと思います。
 これまで、あまり意識していなかったのですが、この規定はどのような意味や背景があるだろうかと気になり、その歴史を調べてみました。

 この累積投票という制度が設けられたのは昭和25年の商法改正だそうです。
 この商法改正は、GHQのもとで、経済民主化に関連して行われたものといわれています(その目的に財閥解体も含まれていたようです)。

 この改正では、株主総会の権限を縮小し、業務執行の意思決定を行う機関として、取締役会を設置しました。この取締役会が取締役の業務執行の監査機能を持つため、監査役の権限を会計に関するものに限定するといった改正等も行われています。

 株主総会の権限が縮小されることになりましたが、株主の地位の強化も行われました。
 これも経済民主化の一環で、会社運営の民主化のためだとされています。
 累積投票制度は、この会社運営の民主化を目的として、一般株主の地位を強化するための方策として、アメリカ法に倣って導入されたのだそうです(当時の商法256条の3)。
 比例代表的思想に基づき、少数派株主もその代表者を取締役として株式会社に送り込むことができるようにということのようです。

 当初も、現在と同じように、累積投票制度は定款で排除することは可能でしたが、定款で累積投票を排除しても、発行済株式の総数の4分の1以上にあたる株式を有する株主は、取締役の選任を累積投票とするよう請求することができました(当時の商法256条の4)。

 しかし、経営の安定化や、資本自由化により外国人株主がその代表者を取締役として株式会社に送り込もうとするのではないかという危惧から、昭和49年の商法改正で、定款で累積投票を全面的に排除できるようになりました。
 そして、この制度が今日まで引き継がれてきています。

 昭和49年の改正当時は、資本自由化の到来とともに、外国資本による買収が危惧され、それを防ぐために会社が相互に株式を持ち合って安定株主となる等の経営政策も行われたようです。

 会社に関する法律のひとつひとつの規定が、経済や産業政策、会社の経営政策と密接に関係があるのだと、あらためて意識させられました。


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